2022年1月28日 金曜日 はつ熱

八時くらいに目覚めて、そのときはすっきりした気分だったのだがすぐ二度寝して、十時過ぎに起きたときは体調が悪いことを自覚した。熱っぽさはなくなったが躰の節々が痛いような気がする。無理すればできなくもなさそうだったが、無理したくないのでバイト先に休みの断りを入れる。


そのあとはひたすら眠っていた。ときどき思い出したように二十分くらい起きて、昼ご飯を食べたりTwitterを見たりして、また眠る、の繰り返し。何が原因かは知らないが体力を消耗しているらしく、ふと眠ってしまう。結局夕方の五時くらいにきちんと目が覚めた。

煙草を吸う気分になれず、そしてちょうど切れてもいたので、かれこれ十数時間吸っていないことになる。「いま煙草を吸ったらきっと美味しいだろうな」という悪魔のささやきがした。喫煙者なら誰でも、しばらく煙草を吸わなかったあとの一服が美味しいことを知っている。そういうわけで買いに出る。

コンビニのほうが近いのだが、ずっと寝ていたので気分転換のために歩いて十分くらいのドラッグストアへ。煙草のほかに飲み物やお菓子を買う。帰り道人気のない公園で一服したらくらくらするように美味しかった。煙草を一日二本とかにしたらずっとこのような感覚が味わえるのかもしれない。

ニコチンが精神依存というのは本当だな、と思う。それまで、たまに目が覚めても煙草を吸おうと思わなかったのに、一度吸いたいという気持ちが芽生えると止まらない。ニコチンが切れても身体的にはなんの症状も出ないのに、精神的な欲求が頭をいっぱいにしてしまう。


躰がだるくてあまり多くのことをしたくないが、こういう体調のときよくありがちなことに頭は元気なので、数年間積ん読しているディックの『シミュラクラ』を手に取るが、冒頭の横文字の連続が既にまったく頭に入ってこない。

諦めてダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読むことにする。こちらは何度も読んだことがあるが、大学に入ってからは一度読んだかどうかという程度で、ちょうどよくプロットを忘れていて面白く読める。この本も横文字にあふれているが、どうせ英国流のブラック・ユーモアの連続できちんと意味を取らなくてもよいとわかっているので気楽だ。

だんだん熱っぽいような気がしてくる。三分の二ほど読んだところで測ると37.4℃だった。発熱だな。発熱している。発熱を「はつ熱」と書くとツルゲーネフみたいだなとかくだらないことを思う。その発想自体が発熱していて頭が奇妙な方向に行っている証拠だ。ツルゲーネフを読んだことはない。

熱に浮かされているときに銀河ヒッチハイク・ガイドを読むのは実にちょうどよく、この本のスラップスティックな描写と、躰はだるいが頭は熱があって元気なときの、あの奇妙な感じが完全にかみ合っているような気がする。ダグラス・アダムスも発熱しながらこれを書いたんじゃないか。じゃなきゃこんな代物ができあがるはずがないからな。


読み終わって、シリーズ二作目の『宇宙の果てのレストラン』もこのまま読んでしまおうかなと思ったのだが、ちょっと文章を読むのに疲れたのでやめてこれを書く。ついでにAmazonアソシエイトの申請をする。今後ときどきこのブログにAmazonの商品紹介が貼り付けられると思うが、それをクリックしてAmazonで買い物をすると私の煙草代になります。

正直言って朝起きたときからこれはたぶんただの風邪ではないという感じがあった。俺は不摂生が災いして風邪をよく引くので風邪についてはある種のプロフェッショナルである。もちろんコロナかもな、と思わないでもないが、それが判ったところでどうにもなりはしない。でも判るとアルバイト先に「コロナで……」と言える。先ほど行ったドラッグストアに電話したら抗原検査キットを取り扱っているが、薬剤師のいる時間でないと販売できないということなので、明日家の誰かに買いに行ってもらおうかな。陰性だったらこういう風邪もあるのか、という勉強になる。