2022年3月7—8日

3月7日

今日もまた引き継ぎのためアルバイト先へ出社。11時始業なので実家から通っても電車は座れる。座れるが遠い。

アルバイトを終えて、神保町で友人と待ち合わせ。喫茶店でしばらく近況や商売について話した後、店を出てHHCを試させてもらう。HHCというのは大麻が含む化学物質(カンナビノイド)の一種で、CBDをずっと強くしたような感じで、まだ規制されていなかった。だがまさに今日、官報でHHCの規制が発表され、17日以降は違法となるという。所持している場合はそれまでに廃棄せねばならない。

とりあえず今は、使用も所持も問題ない。VAPEのようなデバイスでリキッドを吸う形だった。最初うまく吸えなかったのだが、深く吸うとくらっとする。そのまま街を歩く。

まず気づいたのは音の聞こえ方が違うことで、車の音がやけに遠くに聞こえる。全体的にボリュームが抑えられ、その分音の解像度が上がるような感じ。そのあと、街灯や看板などの光がきらきらし始める。レンズフレアのような感じ。瞳孔が開いているのだろうか。いずれも、大した効果ではない。

友人は「考えがどんどん湧き出てくる」と言っていたが、僕は対照的に頭の中が静かになる。何も思い浮かばないし、何も感じない。ただぼんやりとする。うまくキマらなかったのか、それともうまくキマった結果がこれなのか。世界と自分のあいだに一枚フィルターがあるような感覚。帰路、新宿で間違えてすごく遠回りのルートで乗り換えてしまったが、普段だったらちょっといらつくと思うのに、精神が穏やかだった。ダウナーなのでそんなものか。

個人的には、規制するほどの代物でもない、という感じで、精神科で合法的に処方されている薬のほうが(ODせずとも)ずっと影響が大きいと思う。コンサータとか……。ゾルピデムで幻覚を見たこともあるし。あるいはアルコールの方がよほど身を滅ぼすんじゃないの、と思う。アルコールってリスクも効果もそれなりにある薬物だと思うんだけど、みんな好んで摂取していてなぜこれが合法なんだと思わされる。僕はアルコールで良い気分になることができないのであまり好きではない。

こういう日記を書くと、薬物に関心があると思われ余計な詮索をされかねないのが面倒だが、ニコチンもカフェインも習慣的に摂取しているわけで、だから興味がないわけではないが、法的なリスクを背負ってまでやろうとは思えない。精神科の処方薬すら用法用量を守って堅実に服用している。どうせ元から頭がおかしくて、そのために精神科に行くはめになり、治療を受けて社会に適応しようと試みているのに、これ以上おかしくなっても仕方ない。

3月8日

天気が悪く、寒い。三寒四温とはこのことか。天気が悪くて寒い三月なんてろくな一日になりそうにないな、と起き抜けに思う。

昨日不動産屋から保証会社の審査通過の報せとともに、精算書が送られてきたのだが、SUUMOで不要と書いてあったにもかかわらず、仲介手数料が1.1カ月分乗っていた。精算書を見た瞬間から気づいていて、非常にだるい気持ちになった。

大方、客が気づかなければラッキーくらいの気持ちで乗っけているのだろう。国交省ガイドラインでは貸主負担となっている鍵交換費も、相場より高いであろう火災保険もうるさいことは言わない。自腹を切るわけでもないのだし、物件自体は好条件だし、その不動産屋が管理会社のようなので今後のことも考えて。ただ、不要と書いてあったものを請求してくるのはどうかと思うし、そうした態度に疲弊させられる。

あるいは担当者が非常に間の抜けた人物で、たとえば前に使ったExcelファイルをコピー・ペーストして、仲介手数料が乗ったままになってしまったのかもしれないが、どの道そんな会社まったく信用できない。その場でSUUMOの物件ページをスクリーンショットして、さらに魚拓を取っておく。Web魚拓だとmetaタグの設定で拒否されているため魚拓が取れないようだが、別のサービスから魚拓が取れた。

昨日帰ってから、内見のときにもらったマイソク1を見たら、報酬欄に仲介手数料借主100%(負担)と記されていた。ただ仲介手数料の金額は記載されていない。不要なら100%だろうと不要だろうと思うけれども、よくわからない。ただ面倒だ。


起きてしばらくしてから、とりあえず東京都の賃貸ホットラインに電話する。老人と思しき声。仲介手数料が無料と不動産情報サイトに書いてあったのに請求されていること、マイソクには借主100%と記載されていることを伝える。そうすると、「つまり広告の問題ですね。そういうのは今から言うところに電話してください」と言われる。広告の問題というのは、SUUMOの情報と実際が行き違っていることを指すのだろう。

そこで案内された番号は、首都圏不動産公正取引協議会という団体のもの。かけてみてまた同じことを伝える。「マイソクの借主100%という記載を見逃した私が悪いんでしょうか?」と尋ねると「いやあなたが悪いということはないと思いますが……」と言われとりあえず安心。

「結局どういうことをお望みなのかによります。仲介手数料を取り下げてほしいのか、あるいは広告の表示を修正してほしいのか」と担当者は言う。広告の表示がいまさら「仲介手数料:1.1カ月」になったところで「じゃあ問題ないです」となるわけがないので、「取り下げてほしいですね」と答えると「その場合は私どもにできることはないですね。すみません」と言われる。いま調べると、公正取引なんたらというのは「不動産広告の内容が正しいかどうかを審査・調査している不動産業界の自主規制団体」らしい。

「そうですか。では不動産屋に直接それを伝えるべきということですね」と言うと「そうですね。それが良いかと思われます」とのこと。とりあえずマイソクとSUUMOの情報が食い違っていることに気づかなくても責任はない、ということ以外何らの助けも得られなかった。しょうがないので不動産屋に直接電話する。

物件の担当者は非常に押しの強い女性なのだが、別の人が出た。物件名を伝えてその女性に電話を代わられると厭なので、名乗りもせずに「SUUMOで不要と書いてあったのに精算書で仲介手数料が1.1カ月乗っているんですが」と伝える。「そうですか。物件名を教えていただいてもいいですか」と言うので伝えると、担当が席を外しているので戻り次第電話させるという。

しばらくして電話がかかってきて、第一声で「すみませんあたし間違えて乗っけちゃって手数料引いたものをすぐ送りますんで」とまくしたてられる。舐めてるのかと思いつつ「そうですか、よろしくお願いします」と返した。話がこじれなくてよかったが、阿漕な商売だな。次物件を探すときはまずきちんとした不動産屋を探すことから始めようと決意するに十分だった。

そして都の賃貸ホットラインが、今回の場合はまったく役に立たなかった。すでに請求されている状態でいまさら広告を修正して気が済むわけがないので、広告表示がおかしいことを咎めたいわけではないから、公正取引協議会なるものを紹介されても困る。僕がはっきりとした意向を伝えなかったのが悪いのかもしれないが……。同様の人が十人いたとして九人は仲介手数料を取り下げてほしいだろう。


  1. 物件の情報が記された紙