2022年3月10日 木曜日 月

さっきろくに建物のない場所を散歩していて、地平線に沈みかけた半月が赤く見え、それで子供のころ月が怖かったな、ということを思い出した。正直なところいまでも月が怖く感じられるときがある。

満月は美しいと思う。苦手なのは赤い月と極端に細い月だ。赤い月の方はあまり目にすることがないが、細い月は満ち欠けの結果なので頻繁にやってくる。それを目にするかは別として。

月を怖いと思ったきっかけも覚えていて、小学校の最初の方だったか、家族で旅行した帰り道、車のフロントガラスに大きく赤い満月が映った。赤い月を見たのが初めてだったし、また地平線に近かったためか信じられないほど大きく見えた。大変怖かった。まるで望遠レンズで撮影したように。今思えば皆既月食だったのだろう。それ以降月が苦手になった。

当時は月が出ていたら下を向いて歩くくらいに怖がっていた気がする。家族はだから僕が月を怖がっているということを知っていて、でも「子供があれを見たら怖いと思うのも無理はない」と言っていたので、よほどすごい月だったのだろう。

今ではだいぶましになっているが、それでも当時もより苦手だった細い月が出ているとうっと思う。そちらに目を向けないように歩く。帰路の正面に出ていたりすると結構厭だ。逆に見つめてみて、こんな細い月は異常だ、やっぱり怖い、と思ったりする。地球照がその鋭利さを際立たせていて最悪だ。赤い月ならなおさらだ。

知っている人もいるだろうが、僕の本名には月という字が入っているので、その字までは怖くならなくてよかったなと思う。入っていなくても月曜日とか四月とかいくらでも目にする機会があるので結構しんどかっただろう。いや天体の月も目にする機会は多いのだけど。満月と新月の日は気が休まる。できればもう満ち欠けないでほしい。